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ゴム動力プラ子の日記 〜第211
回〜  2013年 6月28日(金)

 

50代突入。スイッチ切り替えます。プチッ!

本日から新しい人生を歩む、、、、ぐらいの気持ちでいます。 しかし、半世紀か・・・・・・。

小学生の低学年のころは、ほんとにアホな子供で、人に意地悪されたことと食べ物の記憶ぐらい

しかありません。高学年になり、やっと人間になった私ですが、その頃から、あまりやることが

変わっていない!と同級生に突っ込まれるような部分もまだあるものです。でも、ある程度の

覚悟をしないと恥ずかしい年代になりました。

 

よく成人式で大人になった実感はありますか?との問いに、「ぜんぜん昨日と変わらない」

「わかりません」と答える場面をみますが、そうじゃないんですよね。1日で自然に変わるわけない。

自覚ですよ、自覚。自分で自分のスイッチを切り替えないといかんのであります。 よね?

 

前置きはそのぐらいで。さて、「ボク」と「優子さん」はどうなるのか。 

 

では第4話どうぞ〜。

 

=====

■キリ番■

 

第4話 「来てくれてありがとう」

 

「来てくれてありがとう」

「こちらこそ、来てくれてありがとう」

クスッと笑い合って、挨拶は終わりだ。

 

「夜景きれいですよ。ほら・・・」

「うわ〜 ほんとね〜」

持ってきた手提げ袋を置き、窓辺に立った優子さんをいつ抱きしめようかと、オロオロ

する自分が情けない。

そのとき天のお告げのようにプラ子姐の声が聞こえたような気がした。

「電気を消すべし!早く。」

 

あ、そうだよ、そうしなくっちゃ。

「電気消すともっと夜景がきれいじゃないかな。ほら・・・」

そう言って、ボクはスイッチを片っ端からひねって電気を消した。

 

「うわっ」

真っ暗になった部屋から見下ろす夜景は、まるでソーラーシティーか、宇宙コロニーか、

いやいや銀河を旅する999の車窓から、って感じか。そうなるとボクはテツロウで、彼女は

メーテルだ。長い髪、細い体、そして大きな瞳はまさにメーテル・・・。そうだ、誰か

に似てると思ったら、メーテルだ。

 

ボクはスイッチボードに 手を掛けたまま、窓際の彼女のシルエットに見とれていた。

なんときれいな人なんだろう・・・。

 

夜景を見ていた彼女が振り返った。ぎくっとしてボクは半歩後ろに跳ねた。

 

「なんか、飲む?」

「ワタシ、ワイン持ってきたの。」

「え〜準備いいね。ありがとう」

部屋には当然のようにワインオープナーが置いてあり、きっとボクよりずっと器用な

彼女の前で緊張しつつそのワインを開けた。彼女は持ってきた小さな手提げから

チーズとクラッカーを出しながらボクを見ると、最後に、

「ほら、生キャラメルも!」

といって、丸い包みをボクに見せて笑った。

「これで一応パーティーになるわね!」

「うん。」

 

高嶺の花の優子さんが、ボクの目の前で無邪気なノーメークの笑顔を見せている。

田中よ、おまえには悪いが、ボクはもう、今夜、優子さんを部屋に帰すつもりはない

からな。

 

「なんだかお祝いみたいだ。なんの御祝いだろう。あ、キリ番か?いやいやあれは

 優子さんのじゃないし」

 

そういいながら、夜景に目を移し、また視線を彼女に戻した。

ボクが彼女の顔をみて思わずに笑顔になる。

しかし、優子さんは黙ってしまった。なんかまずいことでも言ったかな。

「どうしたの?急に黙って・・・」

優子さんがアンドロイドのように固まっているように見えた。再起動中みたいだ。

ものすごい不安に包まれたとき、彼女の瞳が揺れた。

 

ボクを見つめてる。まっすぐに見つめている。ボクはその視線に耐えられなくなり、

彼女を抱きしめた。そしてもう一度確かめるように見つめ合ったとき、僕たちは

引き合うようにそっとキスをした。彼女から甘い香りがした。

 

「ん?」

「あ、待ちきれなくてキャラメルこっそり口にいれたの、バレちゃった?」

「あはははは そういうことか」

面白いよ、優子さん。メーテルなのに。

ケラケラ笑う彼女に、ボクのハートは、もう完全に打ち抜かれていた。蜂の巣状態だ。

その後、ボクたちはどちらともなく手をつないで隣の部屋に向かった。

彼女の手は案外冷たかった。

 

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